保釈について
1 保釈とは
逮捕・勾留されたまま起訴された被告人は,裁判が終わるまで勾留が続くのが原則です。実は,起訴後に勾留が続く根拠については,はっきりと規定されているわけではありませんが,刑事訴訟法第208条第1項が「前条の規定により被疑者を勾留した事件につき、勾留の請求をした日から十日以内に公訴を提起しないときは、検察官は、直ちに被疑者を釈放しなければならない。」と規定しているのを反対解釈することで導かれるとされています。
つまり,刑訴法第208条第1項を反対に読むと,「検察官は,被疑者を勾留した事件について,勾留の請求をした日から10日以内(勾留延長が認められれば20日)に公訴を提起(起訴)すれば,被疑者を釈放する必要はない。」と読めるということです。
また,刑訴法第60条第2項には,「勾留の期間は、公訴の提起があった日から2箇月とする。特に継続の必要がある場合においては、具体的にその理由を附した決定で、1箇月ごとにこれを更新することができる。」と規定してあり,起訴されてから2ヶ月間は,原則として勾留が続くことが分かります。
一方で,刑事訴訟法では「保釈」という制度が定められています。
保釈とは,被告人に保釈金(正式には,保釈保証金)を納付させ,それを一種の逃亡防止の担保として,被告人を暫定的に釈放する制度のことです。
裁判所は,被告人側から保釈の請求があった際,刑訴法第89条の1号から6号に規定してある場合にあてはまらなければ,保釈を認めなければいけません。これを,「必要的保釈」または「権利保釈」といいます。
刑訴法第89条については,別の機会に詳しく見ていくこととします。
では,「必要的保釈」に当たらない場合は,裁判が終わるまで必ず勾留が続くのかというと,そうではありません。「必要的保釈」が認められない場合でも,裁判官が保釈を認めることが相当であると判断することがあります。これを「裁量保釈」といいます。
2 保釈金(保釈保証金)の相場はいくら?
保釈が認められると,その決定書に保釈金(保釈保証金)の金額や保釈を認める条件が記載してあります。刑事訴訟法第93条は,保釈金について,「被告人の出頭を保証するにたりる相当な金額」と規定しています。カルロス・ゴーン被告の保釈金は15億円でしたが,それは,資産が多額である場合,ある程度保釈金が高額でないと,逃亡防止等のための担保にならないからです。ですから,被告人の資産によって,保釈金の金額は変わってきますが,一般的な資産の被告人であれば,150万円から300万円の金額とされることが多いです。
3 保釈金を用意できないときはどうすればいい?
保釈金を支払わないと,釈放はされません。しかし,100万円を超えるお金をすぐには用意できないという方が多いと思います。保釈許可決定に対して準抗告をし,保釈金の金額を争うということも考えられますが,認められた事例はあまりありません。
自分で保釈金を用意できない方のために,「日本保釈支援協会」という社団法人があります。同協会では,保釈保証金立替事業と,保釈保証書発行事業を行っており,保釈保証金立替では,500万円を限度に,少額の手数料で保釈金を2ヶ月間(手数料を支払うことで延長も可)立て替えてくれます。申込みや契約は,被告人の近親者等の申込人が行いますが,立替金は弁護人に対して振り込まれ,返還も弁護人を通して行うため,弁護人の協力が必要です。手続きは簡易で迅速であるため,利用しやすい制度であるといえます。
保釈保証書発行については,次に紹介する全弁協による保釈保証書発行事業と似ているため,省略します。
全国弁護士協同組合連合会(全弁協)が行っている保釈保証書発行事業というものがあります。この事業は,弁護人の申込みにより,全弁協による審査が行われ,保証金等を納めることで,保釈金300万円を限度とし,保釈保証書を発行してくれる制度です。裁判所の許可を得て,保釈金を納付する代わりに保釈保証書を提出して釈放されます。
この制度では,保釈保証書をもって保釈保証金に代える旨,事前に裁判所の許可を得る必要があるのと,審査に少し時間がかかるため,保釈請求をする前に申込みをする必要がありますが,金銭的負担が少なく,こちらもよく利用されている制度です。
4 保釈保証金を支払った後の手続き
保釈金を支払えば,その日のうちに釈放されます。ただし,前述のとおり,保釈金を納付するのは,逃亡防止等の担保であることから,一定の事由により,保釈は取り消され,保釈保証金は裁判所に没取されます。(刑訴法第96条)
一定の事由とは,保釈された被告人が逃亡した場合,事件の関係者に接触し危害を加えた場合,裁判所の定めた条件に違反した場合などがあります。理由なく裁判に出席しなかった場合も,逃亡とみなされることがあります。そのようなことがなければ,保釈金は,判決言い渡し後に,全額が還付されます。
5 まとめ
家族や友人が勾留されたまま起訴されてしまった場合,なかなか保釈請求が認められず,長期間の勾留になっている場合,保釈金を支払えるか不安がある場合,保釈された後どうなるのか,いろんな心配があると思います。
もし,国選の弁護士さんがついている場合は,もちろんその弁護士さんに相談してみてください。もしくは,刑事事件に詳しい弁護士に相談してみるのもいいかもしれません。
関連記事
1 釈放・保釈してほしい
筆者プロフィール
お問い合わせ・ご予約
お気軽にご連絡ください
刑事事件に精通した弁護士が対応いたします
当事務所には,検事として長年刑事事件の捜査・裁判を担当し,刑事関係の法令が実際の捜査・裁判の中でどのように運用されているのかという実態に精通した弁護士2名が在籍しており,この2名が中心となって,どのような刑事事件であっても的確な見通しを立て,充実したサポートをすることが可能な態勢を整えています。
刑事事件への対応は,早ければ早いほど適切に行うことができます
お困りの方は、まずは早めにご連絡・ご相談ください