私選弁護人と国選弁護人

1 国選弁護人とは

日本国憲法は,第37条第3項で,刑事被告人の弁護人依頼権を保障し,被告人が自ら依頼できないときは国で弁護人を付すると規定しているので,被告人の国選弁護人制度は,憲法上必置の制度であるといえます。


そして,国で付するとまでの規定はないものの,起訴される前の被疑者の弁護人依頼権についても,憲法第34条で保証されているので,被疑者の国選弁護人制度も年々拡充されてきています。


まず,被疑者国選弁護制度とは,被疑者が勾留されている事件で,貧困その他の事由により弁護人を選任することができず,かつ,被疑者から請求があったときに裁判所が弁護人を選任する制度です。資力が基準以上(50万円以上)の被疑者は,あらかじめ弁護士会に私選弁護人選任申出をしなければなりません。ただし,この資力要件については,満たしていなくても,私選弁護人を選任できなかった場合(費用の問題など)には国選弁護人を選任することができるので,あくまで,国選弁護人の選任を請求する前に私選弁護人の選任を申し出る必要があるというだけで,そこまで厳しい要件ではありません。


重要なポイントは,国選弁護人は,被疑者が勾留されるまでは選任されないということです。逮捕されてから勾留が決定するまでの72時間の間は,被疑者と接見できるのは弁護士のみで,家族などは会うことはできません。更に,勾留は,一度決定されると,原則,10日間は続きます。ですから,国選弁護人が選任されるのを待っていると,逮捕されてから勾留されるまでの72時間の間に示談を行ったり,検察庁に送致されてから検察官に意見書を送って勾留請求を見送ってもらい,早期釈放をするなどの弁護活動は,基本的にできません。

2 当番弁護士制度について

当番弁護士制度とは,弁護士会を通じて,その日当番となっている弁護士に,逮捕直後から接見に来てもらえる制度です。ただし,当番弁護士は,選任されているわけではないので,初回無料で逮捕された人と面会し,法的なアドバイスをしてくれるのみです。もし,当番弁護士に引き続き弁護人になってもらいたい場合は,私選弁護人として改めて依頼する必要があります。]

3 国選弁護人の費用

国選弁護人を選任した場合,基本的に費用はかかりません。まれに,裁判官によって,判決の際に,国選弁護人の費用の支払いを命じられることがあります。その際でも,命じられる金額は,多くて20万円ほどです。   
ですから,金銭的負担については,国選弁護人の場合,原則ないといえます。

4 国選弁護人と私選弁護人

国選弁護人は,裁判所が国選弁護人名簿から自動的に選任するので,自分で選ぶことはできません。逆にいうと,自分で弁護士を探す必要がありません。
国選弁護人と私選弁護人が行える弁護活動に差はありません。しかし,弁護士も報酬等のお金を得ないと事務所の経営ができないので,報酬が低く採算性が低い国選弁護事件に多くの時間を割くことができないのが実情です。同じ理由から,中堅以上の経験豊かな弁護士は国選弁護人として登録していないという事情もあります。その結果,被疑者・被告人やその家族の満足のいく弁護活動とならない可能性はあります。やはり,刑事弁護を専門としていて,依頼者から報酬をいただいて活動する私選弁護人と,弁護活動の質に差が出てくるのはやむを得ないことです。


つまり,刑事事件を専門とする,経験豊かな弁護士が国選弁護人として選任されることは,確率的に低いといえます。


また,もし,選任された国選弁護人に不満がある場合でも,国選弁護人を解任できるのは,刑事訴訟法第38条の3に規定された5つの場合(1,私選弁護人を選任した場合,2,利益が相反する場合,3,弁護士が重病などのやむを得ない場合,4,弁護士に著しい任務違反があった場合,弁護士に暴行や脅迫を加えた場合)に限定されています。ですから,どうしても国選弁護人の対応に満足できない場合,費用を払う余裕があるなら,刑事事件に強い私選弁護人を選任するのがよいでしょう。

5 どういう場合に国選弁護人制度を利用すべきか

私選弁護人を選任すると,やはり弁護士費用がかかります。弁護士費用をどうしても支払えない人などは,国選弁護人が選任されるのを待つことになります。また,前科がつかないような軽微な犯行である場合,一旦,当番弁護士に無料で相談して,見通しなどをアドバイスしてもらってから弁護人をどうするか決めてもいいかもしれません。ただ,そのような場合でも,できるだけ早期に釈放してほしい,絶対に前科がつかないようにしたいというときは,やはり,私選弁護人を選任するべきです。

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